歴史の長いエイム練習法「タイムスケール調整」

ローカルの練習環境でタイムスケールを変更可能なゲームでは、ゲームの進行速度をゆっくりにしたりすばやくしたりできる。つまり、ターゲットの移動速度を任意に変更できる。これをエイム練習に利用する考え方がある。それも、かなり昔から伝わる歴史の長い考え方のようだ。

自分が初めてこの練習法を知ったのは、2009年7月に書かれた『Quake の Aim のあれこれ』というブログ記事。タイムスケールが変更可能な Quake Live における BOT 撃ちの方法として、

  • タイムスケールを 1.2 に設定して素早い動きに慣れ、通常時の認識に余裕を持たせる
  • タイムスケールを 0.x に設定し、Acc 60% などの目標を達成した後にタイムスケールを少しずつ引き上げ、操作精度を高める

といった練習が紹介されている。個人的には、前者が無意識での認識・操作を体に覚え込ませる練習、後者が自分の操作をゆっくり確認・点検しながら改善を加えていく練習と解釈している。

いずれもコンフォートゾーンの少し外側に身を置き続けるという点で共通しており、それがこの練習の本質かもしれない。自分が快適にこなせる範囲を繰り返すのではなく、かといって全く歯が立たない難しさに挑んで挫折することもなく、程よい負荷で徐々に能力を引き上げようとする、練習の基本に則った取り組みといえる。

実際にこの記事を目にしたのは、数年後の鉄鬼*1をプレイしている頃だった気がする。当時、どうしても負け越す猛者たちがいた。「このまま鉄鬼をやりこんでも、猛者の方々も同様に鉄鬼をやりこむのだから、差が縮まることはない」と思った自分は、自分の欠点であるエイムを向上させるため、ゲーム外の練習法を模索することになる。エイムに関して考察した様々な記事を読み、タイムスケールを変更可能な CS:S や Quake Live で BOT 撃ちを重ねた。『おおきく振りかぶって2号』*2もこの頃に知った。

時は流れて、KovaaK's の制作者である KovaaK さんも似たような練習を提唱している。『タイムスケールを 0.65 程度に下げ、60% 以上の Acc を達成したのちに、少しずつタイムスケールを増やしていく』とのこと。

そういえば、KovaaK さんも Quake プレイヤーなのだった。Quake 界隈では昔から知られているエイム練習方法なのかもしれない。KovaaK's はフリープレイモードでタイムスケールを変更できるため、上記の練習に取り組むことができる。

こうした先達の知見を踏まえ、自分でも同様の思想に基づいたシナリオを制作している。タイムスケールを毎回手動で変更するのは手間なので、ゲーム側で移動速度の異なるターゲットに切り替えさせ自動化を図ったものだ。ターゲットの自動回復ペースを上回る Acc を出したときのみ、より動きの速いターゲットに移行する。

KovaaK's 内のブラウザで「Auto Balanced」と検索すると、関連シナリオが出てくる。自分が制作したシナリオの中でも特に好評をいただいているものであり、興味があれば試してもらえるとうれしい。チャレンジモードでは制限時間があり、自分の苦手な移動速度を練習する時間を取りづらいため、フリープレイモードで BOT が一巡するまで取り組むなど、ある程度の時間をかけてじっくりプレイするのも良いかもしれない。

*1:鉄鬼とは (テッキとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*2:ランダムに表示される25個の数字を昇順にクリックする、周辺視野トレーニング。「Schulte Table」とも呼ばれる。ホの字5 - おおきく振りかぶって2号