以前、競技エイミングを紹介する記事を書いた。
それ以降、競技エイミングはどうなったのか。この記事では、これまでの競技エイミングの動向を振り返ってみたい。あくまでも一個人が見聞きした範囲に基づく内容であるため、関連する事象すべてを網羅しているとは言い難いが、歴史を振り返る資料の一つとなることを期待したい。
競技エイミングの動向
2018年11月
競技エイミングの拡散
はてなブログに投稿しました
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) November 8, 2018
知られざる競技エイミングの世界 - pleasewait’s diary https://t.co/geIvR8ZYKZ #はてなブログ
eスポーツ?いえ競技エイミング!
— OooDa (岡上 哲也) (@OooDa) November 12, 2018
この人・・・凄い・・・。 https://t.co/WHEhSZ3fdQ
競技エイミングという言葉が認知され出したのは、記事を公開してから4日後、OooDa さんに言及されたことに依るところが大きいと思われる。自分ひとりがなんとなく使っているだけでなく、多くの耳目を集める方が実際に使っている様を見た方が、その言葉を使いやすいと感じる心理が働いているのかもしれない。
なぜ 4 日にして Oooda さんの目に留まったのかを辿ると、おそらくダーマポイントさん(@DharmaPointsan)のリツイートによるものだろう*1。
はてなブログに投稿しました
— Nyaoй@FPS系ブロガー (@seria77777) November 17, 2018
FPSに必要なエイム力とFPSゲームの本質【おまけ:競技エイミングの話】 - Life for Games. https://t.co/Tb7E3pMGUg #はてなブログ
また、後日には Nyaoй さんにもブログで触れていただき、競技エイミングという概念を見聞きする人々が増えるきっかけとなったと思われる。
エイムコミュニティの発足(Just Aim)
Just Aimhttps://t.co/nfpGbQFiMM
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) November 12, 2018
FPS ゲームの AIM に関する話題を扱う Subreddit が最近できたらしい
まったくの偶然であるが、記事を公開した直後にこうした動きを観測できたのは心強いものがあった。
DreamHack Aim Competition の開催
Want to test if you are the ultimate Aim Master? 😎
— Stainless SteelSeries (@SteelSeries) November 30, 2018
During DreamHack Winter 2018 we are hosting an online Aim Master challenge every day!
Do you think you have what it takes? Then prove it right now
➡️ https://t.co/jaj2yrkU2W ⬅️#FORGLORY@Elgiganten_SE @ZOTAC @MaikaiCph pic.twitter.com/3czCq6sUYm
SteelSeries Aim Master で大会があったことは競技エイミングの記事でも触れたものの、年内にまた別の大会が開催されるとは予想外で、嬉しい知らせであった。
2018年12月
KovaaK's FPS Aim Trainer の隆盛
Heads-up to all of the people new to my game - we run weekly mini-competitions with 3 different scenarios at a time of people trying to grind high scores. Top 3 scores in each scenario get "certified aim beast" gold name in the game's Discord server :). https://t.co/XKNX1MwO9X
— KovaaK_of_qw (@Kovaak_of_qw) December 8, 2018
11 ~ 12 月頃からプレイヤー数が増え始めたようで、KovaaK さんが改めて Weekly Comp*2を紹介しているツイートを見ることができる。
具体的な数値に関しては上記のサイトで確認できる。
プレイ動画の拡散
This score was absolutely crazy, I have no idea why I am much faster with the new S2? pic.twitter.com/THGXcJIhD0
— Huddled (@MashingOsu) December 15, 2018
Impressive! https://t.co/EbKHaLYSid
— ZOWIE BenQ America (@ZOWIEbyBenQUSA) December 16, 2018
KovaaK's FPS Aim Trainer のシナリオの一つ、Tile Frenzy のプレイ動画が広く拡散されている。ZOWIE BenQ America さんの公式アカウントも言及するほどであった。
フォローしていただいているPrimed_Arinkoさん(@CoDArinko)の動画なんですけど・・・中の人はガバガバAIMなのでこんな風にできるの羨ましい。 https://t.co/qxG9QtjWdx
— Dharma_Point (@DharmaPointsan) December 17, 2018
ダーマポイントさんもプレイ動画について言及している。こうした拡散の積み重ねも、人々の流入に一役買っているのではないかと思われる。
People say my aim is pretty good pic.twitter.com/GNpSqniWgC
— Risker (@RiskerFortnite) July 15, 2018
ちなみに、少々時を遡って 7 月には、Risker さんのプレイ動画が広く拡散されていたようである。
2019年1月
日本のゲーミングデバイスへの注目
メタルマウスパッドのミニチュアです。どの方向にも傾斜のない平面 JIS00級の定盤の上でパタンと倒しただけで、空気の層が均等に入りエアホッケーのように動きます。これは、製品の平面度が出ていることと、表面の特殊な研削面により実現します!負荷なくマウスコントロールが出来る優れものです。 pic.twitter.com/LZD73D31rQ
— 【超平面マウスパッド】NINJA RATMAT (e-Sports専用) - 開発チーム (@NINJA_RATMAT) January 4, 2019
この動画があまりに印象的だったのか、海外のコミュニティで話題となっていた。NINJA RATMAT さんはマウスパッドのみならず、マウス・マウスソール・センサーといった関連デバイスの検証もされており、その取り組みはとても興味深い。
Super weird flex pic.twitter.com/LZtgtPRWq9
— NRG Symfuhny (@Symfuhny) January 30, 2019
また、Artisan さんのマウスパッドも人気のようである。
KovaaK's FPS Aim Trainer 練習ガイドの登場
KovaaK's FPS Aim Trainer はシナリオ数が多すぎてどれを練習したら良いのか分からないという課題に対して、具体的なシナリオ名を列挙した上でトレーニングルーチンを提案している。この記事で見逃せない点は、エイムを「click-timing」「tracking」「target-switching」の三種に分類し、トラッキング練習の重要性を説いたところにある。エイムコミュニティ内の質疑応答でたびたび参照されるため、ここでも紹介しておきたい。
また、後日に別のガイドも執筆されている。こちらは、ターゲットとマップの形状から割り出される可動域を考慮した上で、もっともエイムが楽になる位置取りを考えるという、より実戦的な内容になっている。
メディアへの露出
記事の終盤に、競技エイミングに関する言及がなされている。4Gamer さんのようなメディアで紹介されるのは初。
2019年は競技エイミングに注目していきたいと思っています。
— Dharma_Point (@DharmaPointsan) January 14, 2019
競技エイミングの認知度をあげるお手伝いがしたいんですけど、どうしたらいいのか迷ってます
— Dharma_Point (@DharmaPointsan) January 28, 2019
競技エイミングに関心があるとのことで、インタビュー内での言及はその表れだったのかもしれない。
ゲーミングデバイス開発協力の求人
どなたか神奈川県内で出来れば伊勢原市に近く、FPS等の激しくマウスをコントロールするゲームをやられているプロっぽい方いませんか?さらに言うと、当社に出入り頂き、積極的にマウスパッドの開発にクイックリーに対応頂けるような方を募集しております。上からの許可も出ており、募集したいです。
— 【超平面マウスパッド】NINJA RATMAT (e-Sports専用) - 開発チーム (@NINJA_RATMAT) January 17, 2019
NINJA RATMAT さんによるマウスパッド開発協力の求人。エイムに関する知識・経験を生かして研究開発の仕事に携わる、という道の一例として、心強いものがあった。
2019年2月
エイムコミュニティの台頭(Yuki Aim)
Here are 18 setups from a list of yuki aimers! pic.twitter.com/N34q4bEaNh
— Yuki Aim (@YukiAimers) February 20, 2019
Yuki Aim は様々なゲームにおけるエイムの良いプレイヤーたちを繋ぐというコンセプトで発足したコミュニティ。
we hit 1000 membres in our discord that's insane!
— Yuki Aim (@YukiAimers) February 24, 2019
エイムに興味のある人たちの関心を集め、今では規模の大きいコミュニティとなっている。
2019年3月
ゲーミングモニターレビューの求人
【半日アルバイト募集】
— Pixio_Japan【公式】 (@PixioJapan) March 24, 2019
都合の良い日に撮影協力して頂けるエイムに自信のある方を募集します。
・交通費込み5000円支給
・男女問わず
・撮影日、平日のどれかで3時間程度
・場所:神楽坂オフィス
・顔出し有り
所属チームなど撮影協力として紹介させていただきます。
KovaaK's FPS Aim Trainerを60hz, 144hz, 240hzで試しスコアリングを時間内にし続ける簡単な作業です。
— Pixio_Japan【公式】 (@PixioJapan) March 24, 2019
Cb Hiragi @Hiragi_FN さんがPixio Japanのスタジオに来てくれました。60hz, 144hz, 240hzで命中率やスコアにどれだけ差がつくのか、後日Youtubeで公開しますのでご期待ください。 pic.twitter.com/IcAYFpHrO3
— Pixio_Japan【公式】 (@PixioJapan) March 29, 2019
Pixio Japan さんによる、ゲーミングモニターのレビューに関する求人。こちらも、エイムが仕事に結びつく一例として興味深い。
あとがき
この記事に関連して、自分の過去の書き込みを眺めたとき、競技エイミングに対する言及で一番古いものが次のツイートであった。
文字入力の精度と速度を競い合う競技タイピングの分野にあやかって、競技エイミングという言葉を思いついた
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) June 1, 2017
AIM系のゲームと呼ぶよりしっくりくるような気がする
2017 年 6 月 1 日のツイートであるが、この言葉が他の人たちに認知され始めたのは 2018 年 11 月ごろであり、約一年半の歳月を要した。しかしそれは、自分の力でそうなったというものではなく、他の人々の関心や貢献があってのことである。
如何せん、自分には財力も対人折衝力も甲斐性も欠如しているがゆえに、競技エイミングの振興に対してさしたる動きができていないことに若干の負い目がある。もっとも、人それぞれ得意な領分は違うのだから、自分は自分のできる形で競技エイミングに貢献したら良いのかもしれない。動画を投稿して競技エイミングがどんなものなのかを視覚的に伝えたり、他の人々のエイム練習を応援して勇気づけたり、シナリオ制作を通じて新たなエイム練習や楽しみ方を提案したり、あるいは、まさにこの記事のように、競技エイミングに関することを書いて広めるという形であれば、ささやかながら自分なりに貢献できるかもしれない。
そして競技エイミングは、かならずしも今の形が最善とはかぎらない。例えば名称にしても、まったくの初見の人からすれば、エイムのスコアを誇示して序列を決める苛烈な縦社会を想像させるかもしれない。また、絶え間なく他者との競争に晒されることが、疲弊を招く事態に陥るかもしれない。競技エイミングの在り方というのは、今後もずっと課題として残り続けるように思う。
「ポインティングデバイスの正確かつ素早い操作に興味がある人々による取り組み」ということを伝えたいがために「競技エイミング(Competitive Aiming)」という言葉を当てはめてみたものの、もっと良い名称がありそうな気がする
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) March 26, 2019
例えば水泳や登山という言葉は、必ずしも他者との競争を念頭に置いているわけではないために個人の研鑽活動という概念を内包している
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) March 26, 2019
そういう立ち位置の言葉が欲しかったのだけど、「競技」と銘打ってしまうとまるで他者との競争以外の取り組みを許さないかのような厳めしい印象を与えてしまう
「趣味:エイム」「特技:エイム」という表現で伝わるならそれに越したことはない
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) March 26, 2019
ただ、「エイム」という言葉がゴルフやアーチェリーや自己啓発の目標設定といった他の分野でも用いられる表現であるために、若干日和って「競技」という言葉に頼ってしまった
まあ、この分野がもし活発に続くようであれば、そのうち呼びやすく伝わりやすい言葉に洗練されていくことだろう
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) March 26, 2019
最後に、自分の競技エイミングに対する考え方が垣間見えるツイートをいくつかまとめておきたい。
走力さえあれば野球もサッカーも上手くなれるかといえばそうでもないのと一緒で、FPSゲームもAIMだけじゃどうにもならないのは確かだけど、陸上競技のようにそれ単体で競い合う部門があってもいいんじゃないかとは思う
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) May 17, 2017
いままで途方もなく遠くに思えていた道のりが、いつの間にか手の届きそうなところまで近づいていると分かった瞬間が嬉しくてたまらない
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) March 23, 2018
この瞬間を味わいたくてずっとやってきた
これからもそうやっていくんだろう
ポインティングデバイスを正確に操作する技術は FPS のみならず RTS においても少なからず需要はあるはず
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) July 21, 2018
その技術を追求していく中でそれ自体を競い合う文化が勃興してもおかしくはないし、既に AIM 練習系ゲームのコミュニティなど草の根レベルでその萌芽は見受けられる
名称はともかく、いずれ競技エイミング的なものが e-sports の進展に伴ってより認知される可能性は十分にあるように思う
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) July 21, 2018
その時までに、AIM についてはあいつに聞けと言われるような、そんな存在になりたい
I am a competitive aiming player in Japan. This may sound strange, but I practice not to become stronger in FPS games but to just improve my aiming. I think that competitive aiming is something like shooting sports, darts, track and field sports, golf, ten-pin bowling, and so on.
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) December 31, 2018
I have been attracted to competitive aiming. That's why I play various aim-training games. Competitive aiming is not a famous field yet, but I hope it will get more players someday.
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) January 1, 2019
また、世代の垣根を越えてゲームで結びつくというのも、個人的には夢のひとつだったりする
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) January 12, 2019
競技エイミングのシンプルさと奥深さが、これまでゲームをあまり嗜まなずにきた人たちや、あるいは老後の趣味を探している人たちにも通用しないかなとか、そんなことを思ったりもする
競技エイミングを入り口に、世の中には FPS/TPS というジャンルのゲームがあるということ、それが世界でたくさん遊ばれてきたのだということ、それをチームで戦う団体競技が盛り上がっているということまで知ってもらえたら申し分ないよね
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) January 12, 2019
そもそも、練習手法の科学的な検討や練習成果の数値化といった、esports 的な競技に対する本腰を入れた取り組みの延長線上に、今の自分の立ち位置はどこにあるのだろうという興味が自然と湧くわけで、競技エイミング的なものが興るのはある意味必然だったのかもしれない
— ρℓɐǝ↯єωαǐ✛ (@m_plzw) February 13, 2019
競技エイミングの今後がより良いものになることを願っている。